画像(第47回)

"ふくろうと民族の関わりを探究もとめて45年"

枚方市枚方上之町在住 江藤正喜さん

2017年11月23日 取材

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1.取材訪問

 本日登場の夢中人は、仕事の傍ら世界中の各民族がふくろうとどのように関わりを持ち、どのようにふくろうと共に生きてきたかに興味を抱いてきた江藤正喜さんの登場です。 江藤さんは、これらの民族とふくろうの関係をより正確に知るために、各民族の生い立ち、歴史、宗教観、文化と言ったいろいろな分野についても研究を重ねてこられました。 今回の記事は、江藤さんが記述された文面を基本に構成しています。また一部は、江藤さんの執筆本「大草原の呼び声」の中から抜粋し掲載しています。

2.江藤正喜さんのプロフィール

 江藤さんは、天理大学イスパニア学科を1962年に卒業と同時に松下貿易に入社されます。貿易実務を4年間経験し、1966年にメキシコに出向になります。 メキシコに2年、パナマに5年、コスタリカに5年で一旦日本に帰国します。日本で10年の勤務後、2度目のパナマへの出向を命じられます。 パナマに2年、アルゼンチンに3年、マイアミ(パナマ松下マイアミ支店内)に2年間事務所を借りる中でラテンアメリカセンターの設立に尽力されます。 江藤さんは、会社生活の36年間の内半分の18年間を海外で過ごすことになります。日本勤務時代も主に中南米の仕事に携わってこられました。 1997年3月にマイアミから帰国し同年5月に退職されました。

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3.何故ふくろうなのか

 会社生活の18年間を中南米で過ごすことになりこれがふくろうと出会うきっかけになります。 この間各地の民芸品を買い集めて家の棚、壁を占有したため、油絵を描く奥様と場所取り合戦となり、民芸品は何か一点に絞ることになりました。 1972年、勤務地のパナマから出張した南米のフランス領ギアナの店頭でたまたま目にしたブラジル産の強化プラスティック製ふくろう(初めてのふくろう)が気に入り、 民芸品がふくろうになりました。従ってふくろうとは運命の出会い以来45年の付き合いになります。

○特に大切にされているふくろうの宝物

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4.ふくろうとは

 ふくろうは民族によりいろいろな見方をされています。 大きく分けて、ギリシャ系の「ふくろうは学問と芸術の神」、米国プエブロ族の「ふくろうは死の世界とこの世の使い番」、 わが国はふくろうに4種類のイメージを持つ珍しい国です。第一が里山の鳥としてゴロスケと呼ぶ地域があるほど農民とは深い関係にあります。 「ふくろうが鳴いたら糊作れ」という格言は「ふくろうが鳴いたから明日は晴れだ。洗濯物につける糊を準備せよ」という意味で死の世界とは全く関係がありません。

 第二はアイヌのふくろう観です。アイヌの海の神はシャチ、陸の神は熊、ふくろうは彼らにとって村を護る鳥で、神として熊やシャチより上位にあります。 第三は中国伝来の「ふくろうは親をも食らう」から不吉な鳥と見なされます。 第四はギリシャ系を日本化したような「ふくろうは幸せを呼ぶ鳥」として商業主義に利用されている最近の傾向です。

北海道ではふくろうが、伝統の熊の一刀彫を追い落として、土産物として一番の人気ぶりです。 数年前から「ふくろうカフェ」が大都市で急増中です。生きたふくろうを8~10種類展示した喫茶店です。

 ふくろうは、寿命が20~30年と言われています。体は顔がアンテナの役目を持ち、左右の耳が少しズレているためにわずかな時間差を判別して方向を知ることができます。 また頸椎の数が多いため頭は270度回転させることが可能です。大型のふくろうになると子羊ほどの獲物も軽々と持ち上げます。 代表的な猛禽類の一種と言わざるを得ません。羽は飛翔時の滑空音を消し去ることができるため獲物に容易に近づくことができる特徴を備えています。 この機能が新幹線のパンタグラフに応用されています。

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5.ふくろうの種類

 ふくろうは南極を除く全世界に棲んでいます。亜種の扱い方で数が変わりますが、「世界鳥類和名辞典」には、1目、2科(メンフクロウ科、ふくろう科)145種が掲載されています。 約200種という人もいます。 わが国には8種が棲み、フクロウ、シマフクロウが留鳥として知られます。 古代日本では耳〈羽角)があるのをミミヅク、耳なしを単にふくろうと呼び分けていましたが現代の分類法とは一致しません。 耳があってもシマフクロウ、耳がなくてもアオバヅクなどがあります。ヅクは古代大和言葉でふくろうの意。

日本に生息するふくろう シマフクロウ、トラフヅク、コミミヅク、コノハヅク、リュウキュウコノハヅク、オオコノハヅク、アオバヅク、ニホンフクロウ の8種類がいます。

6.ふくろうと民族

 これが江藤さんの研究テーマです。世界には5千ぐらいの民族があり、ふくろうは南極を除く人の住むところには必ず棲んでいます。 それらの民族がふくろうをどのように見て感じているか、民話、神話、童謡などを通じて勉強しています。

 各民族がふくろうをどう見ているか、歌っているかで、ギリシャ系(ふくろうを芸術の神アテナ女神の従者とする)か民族系(死の世界と関係する)か、 また歌われた時代などが分かります。 これまで多少なりと調べられたのは、アイヌ、メキシコ先住民、米国プエブロ族、古代ギリシャ、古代ローマ、ドイツ、スペイン、イギリスの国や地域に限らています。 なお、キリスト教国はギリシャ系ですが先住民がいれば別系統と共存です。いずれにしても手付かずの地域が多く、ふくろうは生涯学習のテーマです。

7.ふくろうと民話

ギリシャ神話とふくろう

 ふくろうはギリシャ神話の女神アテナが未だ農業の神として、ギリシャの一地方で祭られている頃そのお使いとして登場します。 やがて古代ギリシャ国家の発展と共に、アテナも神格が上がり軍神となり芸術の神となって従者のふくろうも昇進します。やがてふくろうはキリスト教と共に ヨーロッパに広がっていきます。ふくろうのイメージは芸術の神から学問の神そして知恵の神へと変わり、今日では幸運の神として世界中に愛好家がいます。

中南米のふくろう 

 中南米のふくろうは2つの顔を持っています。ひとつはヨーロッパ伝来のアテナ女神の従者としての理知、芸術学問の神としての顔を持っています。 もうひとつの顔は、先住民の伝説や迷信に現れる悲しいあるいは不吉な兆しとしてのふくろう、ミステリアスな夜の鳥としての顔を併せ持っています。

アメリカ合衆国(ニューメキシコ州)プエブロ族のふくろう

 北米南西部の先住民プエブロ族は18の集落に分かれて住んでいます。共通の文化を守りながらも独自の祭礼を行い、民芸品(陶器や織物など)も少しずつ異なります。 ふくろうは300を超える自然の神の一つで「この世(人間)の出来事をあの世の神に告げる」と信じられています。 神々はカチーナと呼ばれる木彫りの人形や祭礼で使用する面で表されています。

日本のふくろう

 日本では、宮沢賢治が”かしわばやしの夜”のなかで、かしわの木が林の中で歌合戦を行うと言うメルヘンの世界を描き、沢山のふくろうを登場させ重要な役割を担わせています。 一方では、若山牧水、種田山頭火など多くの歌人が山里のふくろうを歌っています

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8.ふくろうを訪ねて

 年と共に遠出が億劫になって来ましたが、元気なときはふくろうの珍しい話があればすぐ駆けつけていました。 海外ではギリシャ、アルゼンチン、国内では北海道、京都、大阪、岡山、宮崎などでふくろうを観察しました。 同好の士も東京の優れた研究家、大阪では趣味が高じてふくろうの店を始めた人々などを訪ねました。

9.ふくろうを研究して良かったこと

 ふくろう観が民族によって異なること、日本と同じように森羅万象を畏敬の対象とする民族が多く、日本の神道を外国人に語るとき、 ギリシャのふくろうやアメリカインディアンの自然観を例に挙げれば理解が得やすいことが分かりました。 一神教以前の民族は全て自然を神としていたので共通項が見出しやすいことに気がつきました。

10.驚いたこと、残念なこと

 ふくろう趣味をいつか本にしたいと考えていましたが、あるとき書店で飯野徹雄著「ふくろうの文化誌」を発見してショックを受けました。 ふくろうの書籍は内外に多数ありますが、この本は私のふくろう観と非常に近かったためです。 さらに追い打ちをかけるように著者は「フクロウの民族誌」を出版されました。 完全にノックダウンされた気分でしたが、後に東京に著者を訪ねたとき、私のふくろうエッセー60編をご覧になり、「もっと早く知り合っていたら・・・」 とのお言葉を頂き救われました。飯野氏は逝去される前に4千点のコレクションを豊島区に寄贈され現在「豊島ふくろう・みみずく資料館」となっています。

○「大草原の呼び声」の一部を紹介します

パジャドールの魂

夕暮れの陽が
すすり泣き
西空に傾く時
悲しみの影は
パンパを駆けて行く
朝の陽が晴ればれと
草原を照らす時
悲しみの影は
草原に口づけし
愁いをふくみ逃げて行く
・・・・・・・・・

(※)ガウチョとは、アルゼンチン、ウルグアイ、ブラジル南部のパンパ(草原地帯)やアンデス山脈東部に17~19世紀にかけて居住し、主として牧畜に従事していたスペイン人と先住民との混血住民を表わす。現在は農民となっています。 パジャドールは、ガウチョ出身の吟遊詩人。

 

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11.江藤さんのコレクション

 江藤さんのコレクションは、1500点を越えて自宅の門扉から玄関ドアまで、玄関を入っても廊下を進んでも視覚の範囲にふくろうが見えないところはない。 書斎に入ってエッと思わず声が出てしまいます。その数々をご覧ください。

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12.江藤さんのエッセーのまとめ

 江藤さんの最初の作品は、アルゼンチンで見聞、蒐集した歴史や民族の資料と、サントスベーガの叙事詩を翻訳し、定年後すぐに『大草原の呼び声』を出版されます。 書き物の趣味を持つ江藤さんは、ふくろうのエッセーと共に他の分野のエッセーも残されています。

①ふくろう通信 世界各地のふくろうの生態や調査結果等を50章の本編と10章の番外編で紹介しています。

②アナサジ通信 ふくろうの縁で訪ねた米国南西部の魅力を伝えたいと思い立ち、南西部の歴史と自然、アナサジの遺跡、アナサジの末裔(プエブロ族)の話を交えながらアナサジ文化の魅力を紹介しています。現在20章の本編と7章の番外編成です。

③裏通りのスペイン語 世界にスペイン語を母国語にしているのは20の国とその他の地域があります。これらのスペイン語圏の国や文化、歴史あるいはちょっとした話を紹介しています。 発行開始よりNo.100を数えるに至りました。

これらの研究成果や書き物は、世界中のふくろう仲間やお世話になった皆様とメールやラインで情報交換しています。そして更なる活動の糧にしておられます。

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13.その他

 その他の活動として江藤さんは、スペイン語をシニアに教えることにより「教えることは学ぶことなり」を身をもって経験しています。 週2回各2時間の講習のために1日は準備が必要で、現在の生活のひとつの区切りになっています。 趣味のふくろうの話も同じで、趣味を語ることは自分の趣味を見つめなおすこと、学びなおすことに他なりません。 分かりやすく語るには人の趣味への普段の関心度も問われます。 不苦労、福郎などと気軽に呼んでお守りや数々のふくろうグッズを売る商業主義との妥協も必要となります。 いつか同好の士の集まり、枚方ふくろうの会でも立ち上げ、ふくろうの観察に出かけ、ふくろうの民話を語り、 癒し系のふくろうの動画をYouTubeで見たりして楽しみたいと考えています。


最後に・・・江藤さんは、松下在職中から世界各地の民族とふくろうの関係に関心がありましたが特にアルゼンチンの地方にも関心が深くこの頃の研究成果を 『大草原の呼び声』~パンパと吟遊詩人~知られざるアルゼンチンとして執筆・発刊されています。 枚方市立図書館には蔵書されています。興味のある方はぜひ一読ください。

取材:梅原、吉川、徳田、中溝、HP作成:中溝


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