■ 混乱するNTTグループの「ひかりTV」と「フレッツ・テレビ」 (2010年05月07日)
NTT(多分代理店?)からの光テレビの勧誘攻勢に、辟易している人が多いようです。加えて、NTT冠の光テレビサービスが2つあり、ユーザーが混乱しています。NTT東西の次世代ネットワーク「フレッツ光ネクスト」の提供開始に合わせて、ほぼ同じコンテンツの「ひかりTV」と「フレッツ・テレビ」のユーザー獲得競争が激化しているのです。
「ひかりTV」はNTTコミュニケーションズ(NTT Com)グループの「NTTぷらら」が、子会社「アイキャスト」からコンテンツ提供を受けて、専門チャンネルとビデオオンデマンド(VOD)をメインに、新しく地デジ「IP再送信」(タダ)を加えた光テレビサービスです。BS放送は視聴できません。
一方、「フレッツ・テレビ」はNTT東西が直接「スカパーJSAT」の子会社「オプティキャスト」と組んで、地デジとBS放送をメインに、専門チャンネル(スカパー!)をオプションにした光テレビサービスです。
関西には関西電力グループの「ケイ・オプティコム」が、子会社「ケイ・キャット」からコンテンツ提供を受ける「eo光テレビ」もあります。関西では「ひかりTV」「フレッツ・テレビ」「eo光テレビ」と併せ、ほぼ同じコンテンツのサービスが3つあります。
今回は次世代ネットワーク「フレッツ光ネクスト」の概要と、3つの光テレビサービスの違いをみていくことにします。
<NTT東西の次世代ネットワーク>
NTT東西は次世代ネットワーク(NGN:Next Generation Network)である「フレッツ光ネクスト」の商用サービスを始めました。2008年(平成20年)3月31日から首都圏と大阪府でスタートしましたが、現在ではサービス範囲は全国の主要都市に及んでいます。ユビキタスネットワーク社会はすぐ近くまで来ています。

NGNは「IP技術をベースとした次世代ネットワーク」で、100年ぶりの通信インフラの大転換といわれます。100年の歴史を持つ電話交換機によるネットワークが、IPベースのネットワークへと刷新される、通信の歴史上において過去に例がない試みです。電話交換機の新設とメンテナンスには膨大な資金と熟練した多くの技術者が必要で、NGNは費用対効果という差し迫った難題の解決策でもあります。
これまでの通信の仕組みは回線交換によるもので、家庭やオフィスに設置されている固定通信網と、携帯電話や無線LAN通信などのモバイル網、企業などの専用通信網といった異なる通信網がそれぞれに独立し、個別のサービスを提供する形となっていました。NGNはこれら別々だった公衆網を統合して、複数のサービスで共有するネットワークです。
NTT東西はこのNGNを「フレッツ光ネクスト」の愛称で呼び、サービス提供エリアを拡大していき、新しい契約はフレッツ光ネクストにしています。回線の性能はアップしますが、価格設定は従来のBフレッツなどと同じにしています。
(注)IP:Internet Protocol
IPとはネットワークに参加している機器の住所付け(アドレッシング)や、相互に接続された複数のネットワークの通信経路の選定(ルーティング)をするための通信プロトコルです。Protocol(プロトコル)とは通信の約束事です。NGN最大のキーワードが「IPv6」(Internet
Protocol ver.6)で、エンド・ツー・エンドの通信が基本となります。従来のIPv4のアドレスが2の32乗(43億)しかなく、長い間「アドレスの枯渇」がいわれてきましたが、IPv6は2の128乗(43億の4乗)となり実質無限のIPアドレスを確保できます。IPv6はユビキタス社会の家電1つひとつにまでアドレスを振れるのです。
<ひかりTVとコンテンツ>
ひかりTVはNTTぷらら が運営する、専門チャンネルとビデオオンデマンド(VOD)をメインにした映像配信サービスで、そのコンテンツは「アイキャスト」が提供しています。ひかりTVのコンテンツは大きく次の3つです。
・テレビサービス:70以上の専門チャンネルを揃えた“多チャンネル放送”
・ビデオサービス:総本数10,000本以上のビデオを、“ビデオ・オン・デマンド”で提供
・カラオケサービス:15,000曲以上がご自宅のリビングで歌い放題!
ひかりTVが上記のサービスに加え今力を入れているのが、2008年5月9日に開始した日本初の地上デジタル放送の「IP再送信」です。この地上デジタル放送の視聴には費用は発生しません。ただ、この地上デジタル放送を視聴可能な回線はフレッツ光ネクストになるので、契約の際はサービス提供エリアを確認する必要があります。
ひかりTVの契約はNTTぷらら をはじめ、プロバイダに関わらず申し込みが可能です。なお、BSデジタル放送のIP再送信も予定されているようですが、現在は視聴できません。
<ひかりTVの伝送方式とテレビの接続>
一般のCATVの配信(再送信)は、変調された電波を受信してそのまま、あるいはケーブルに適した方式に変調してRF(Radio Frequency)信号として伝送しています。フレッツ・テレビやeo光テレビも、同じようにデジタルのテレビ信号をRF信号として伝送します。
これに対して、ひかりTVではデジタルのテレビの信号を、一般のデータ通信と同じようにIPパケットに分割して伝送します。従って下図のように、ルーター(またはCTU)を経由してLANケーブルで専用チューナー(※印)に接続します。専用チューナーはIPパケットを映像信号に変換し、AVケーブルでテレビと接続します。テレビ内蔵のチュ-ナーは使いません。

このようにひかりTVは専用チューナーを使う方式ですから、テレビ1台にチューナー1台が必要です。CATVやフレッツ・テレビのように、同軸ケーブルを分配器で分配してテレビを何台も接続することはできません。この専用チューナーは、NTTぷらら
よりレンタル(525円⁄月)します。
(注)IPパケット
一般のデータ通信では、デジタルデータをパケット(あるいはIPパケット)と呼ばれる細かい単位に分割して伝送します。このパケットは、(1)宛先のIPアドレスが書かれたヘッダ部と、(2)データが格納されるデータ部に分けられ、ヘッダ部のIPアドレス情報を基に宛先まで転送されます。
<フレッツ・テレビ>
フレッツ・テレビは、スカパーJSATの子会社「オプティキャスト」が運営する放送サービスで、専門の販売会社オプティキャスト・マーケティングに、NTT東西が出資する形を取っています。地上デジタルとBS放送をアンテナなしで簡単に視聴できることに加え、スカパー!の専門チャンネルを1チャンネルずつオプションで追加視聴できるのが特徴です。
ひかりTVと異なるのは、光回線内にIP伝送路とは別にRF信号を送る伝送路を設定し、アンテナから放送波を受信するのと同じ仕組みで放送サービスを提供することです。このため地上波だけでなくBS放送の再送信も提供できます。
フレッツ・テレビの回線は、フレッツ光ネクストに限らず光回線ならOKです。このサービス提供にはNTTの局舎屋上にUHFとBSのアンテナを設置する必要があり、順次サービスエリア(西・東)を拡大しています。ただ、ひかりTVのサービスエリアよりやや遅れ気味のようです。
フレッツ・テレビの屋内配線は、基本的に一般のCATVやeo光テレビと同じです。CATVの配信(再送信)方式は、受信した電波をそのままケーブルに乗せるパススルー方式と、ケーブルに適した変調方式に変換して送るトランスモジュレーション方式(専用のSTBが必要です)があります。
フレッツ・テレビでは下図のように、地デジ・BSとスカパー!e2(オプション)はパススルーになっていますので、現在市販のデジタルテレビなら分配器を使って何台でも視聴できます。ただ、スカパー!光(オプション)を視聴する場合は、専用チューナー(STB)が必要です。

<eo光テレビ>
eo光テレビは「ケイ・オプティコム」が「ケイ・キャット」より映像の供給を受けて、2009年6月からBSデジタル放送のパススルーも始めました。下図の2台目、3台目のテレビのように STB(eo光テレビチューナー)がなくても、地上波放送に加えBSデジタル放送も受信できるようになります。我が家でもBSパススルーに変更しました。
eo光テレビを契約中のユーザーがBSパススルーにするには、室外のONU(Optical Network Unit)をBSパススルー対応のものに交換する必要があります。下図には記入がありませんが、テレビへの分岐は分配器(市販品)を介する必要があります。また、各テレビごとに分波器(市販品)を経由して、地上波とBS/CSのアンテナ端子に分波する必要もあります。

<サービス利用料の比較>
ひかりTV、フレッツ・テレビ、eo光テレビを利用するには、それぞれの利用料にプラス回線利用料が必要です。下表は回線利用料(戸建の場合)のほか、プロバイダ費用、光電話利用料などもまとめました。
NTT東西は法規制上、回線運用のみ可能でプロバイダになることはできません。インターネットを利用する場合は、いずれかのプロバイダと契約する必要があります。プロバイダ費用は業者や契約内容によりいろいろです。ケイ・オプティコムは回線運用とプロバイダを兼業しています。光電話は利用料の他に、別途通話料(全国どこでも3分で約8円)が発生します。

<参考:CS放送とスカパー!>
BS放送とCS放送はともに人工衛星を利用した放送で、BS(Broadcasting Satelites)は「放送衛星」、CS(Communication
Satelites)は「通信衛星」の略称です。CS放送は、東経124/128度の2衛星による放送と、東経110度CSデジタル放送の2種類があります。
124/128度CSデジタル放送の受信には、専用のアンテナとチューナーを設置する必要があります。一方、110度CSデジタル放送とBSデジタル放送の衛星と同じ経度上にありますから、受信アンテナおよびチューナーはBS用と共用することができます。市販のデジタルテレビやDVD/BDレコーダには、BS/110度CSのチューナーが内蔵されています。

CSデジタル放送は2008年10月1日からハイビジョン画質(HD)放送を開始したのを機に、その愛称の変更をしました。124/128度CSデジタル放送の愛称「スカパー!」は、HD画質の放送を「スカパー!HD」に、従来のSD画質のそれは「スカパー!SD」としました。NTT東西の「フレッツ・テレビ」向けに、新しく「スカパー!光」の愛称も作りました。
110度CSデジタル放送は「e2 byスカパー!」から、「スカパー!e2」に変更しました。ちなみに、「e2」はeasy entry(手軽に加入できる)と、easy entertainment(手軽に楽しめる)という2つの意味で命名されたようです。
衛星運用とチャンネル配信の会社は新参入・合併を繰り返し、現在では大手は「スカパーJSAT」の一社となりました。「スカパー!」は狭義には、上記の124/128度CSデジタル放送(英語名SKY
PerfecTV!)を指しますが、広義には「スカパーJSAT」グループにおけるチャンネル配信事業全般のブランド名でもあります。BSデジタル放送に「デジタルWOWOW」や「スターチャンネル
ハイビジョン」などもありますが、概してCS放送=専門チャンネル=スカパー! ということができます。
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