第52回 夢中人紹介 関本 政俊さん

 せきもとまさとし 

“ものづくり人財の指導を通して 感謝報恩の余生を送りたい”

枚方市山之上北町在住
2023年3月16日取材

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1. プロフィール

  • 出身地:1947(S22)年8月15日、広島県廿日市市(旧大野町:安芸の宮島の対岸)に生まれる
  • 1963年:松下電器工学院機械科入学
  • 1966年:松下電器工学院卒業、松下電器入社 生産技術研究所配属、技能五輪フライス盤訓練
  • 1967年:技能五輪大阪府大会出場第1位:大阪府代表選手、全国大会出場
  • 1967年:生産技術研究所 機械工場配属:電気製品生産用自動機基幹部品精密加工従事
  • 1996年:生産技術本部:高度技能開発センター:技能五輪、技能グランプリ、技能検定等教育訓練責任者
  • 2002年:松下電器早期退職(54歳)

2. 機械加工の人材育成(個人事業にて「技術・技能伝承事業」を2005年から開始)

  • 2009年:(株)テクノスタッフ創立:当初は、自前の研修施設は所有せず出前支援や借用施設で教育訓練
  • 2014年:守口市で「大阪匠塾」設立し自前「研修施設」開設、2017年高槻市に移転し施設拡張する
  • 関連の所属団体:⒈ 大阪府職業能力開発協会、⒉ 北大阪商工会議所
  • 活動場所、時間、ペース等(昨年一年間の活動実績等): 高槻市の会社、週4日勤務(週休3日)、金曜日は趣味活動日

3.テクノスタッフの設立動機

  • 在職中から感じていた日本のものづくりの海外移転に伴う技術・技能力の衰退に危機感を抱いたこと
  •  松下電器工学院が1973年に11期生迄の約1500名の卒業生をもって廃止され、短大に改変されました。廃止の要因は「中卒の優秀な人財が集まらなくなった」という事でした。廃止を本当に幸之助創業者は了解されたのか? 本当に優秀な人財募集に注力された結果なのか?と、この結果に大いに疑問を感じていました。 事実1980年代~2000年位までは、真にこの1500名の工学院卒業生が松下電器の海外拠点を含めた生産技術の屋台骨を背負ったといっても過言ではないと生産技術本部で過ごした私は、考えていました。その理由は、どこの事業部、海外工場に生産設備を据付に行っても、必ず工学院OBがおられ活躍されていたからです。更に会社生活終盤で高度技能開発センターにて技能五輪・グランプリ、技能検定、全松下技能競技大会等に関する 技能者育成責任者を担当させて頂いたことです。その経験を社会で生かし、少しでも日本のものづくり力再生に寄与したいという想いからです。
  • 目標は「ものづくりは人づくり」からの信念で、微力ながら日本のものづくり力を再生させる原動力となりうる人財育成を図ることにあります。

4.活動の実際

  • 講師団にはパナソニックのOBが多く、現役時代からの知人の方、松下電器工学院の先輩・後輩の繋がりや生産技術本部での業務を通じた各事業部の生産技術者の方々とのご縁で有難いネットワークです。
  • 会社設立の生徒募集、講師募集、体制づくりのポイントは、「ひと・もの・かね」三要素が重要ですが意外とスムーズに設立できました。それは、個人事業で5年間、講師と共に技能伝承活動を展開していたことで「大阪府工業会協会」(初代会長:松下幸之助氏)や日刊工業新聞社等からセミナー講師依頼が結構ありました。創業拠点は枚方市の創業支援制度でインキュベートルームを3年間借用できたことで種々経営に関するアドバイス等も頂きました。講師陣は、先述の通り工学院ルート、社内生産技術者ルート、大阪府職業能力開発協会ルートでのコマツ、クボタ、三菱電機、ダイハツ、松下電工等の生産技術者・有資格者等のヒューマンネットワークで講師人材確保もできました。
    • 日本人技能検定(定期試験)受験者セミナー受講者:245人/年
    • 特級:製造の管理職職長クラスが受講、経験15年程度:試験内容、レベルは、中小企業診断士に近似,合格率20%程度
    • 1級:同7年から15年程度試験内容は、学科、実技、実技ペーパー試験がある,合格率30~40%程度
    • 2級:5年から10年程度の経験者が受験、1級よりやや簡単な試験レベルである,合格率40~50%程度
    • 3級:実務経験のない工業高校生や女性の受験者が多い,合格率50~60%程度
    • 外国人技能実習生技能検定(随時実施試験)受験者セミナー受講者:560人/年
    • 基礎級:日本に入国後1年目に実習先で受験、学科、実技試験を日本語のみで受験:基本的な内容の試験 合格必須で不合格の場合は、帰国となる,合格率80~90%程度
    • 随時3級:日本に入国後3年目に受験、試験内容は、日本人3級と同内容で不合格時は、帰国となる,合格率60~80%程度
    • 随時2級:日本に入国後5年目実習終了時に受験必須,合格率10~20%程度 
    • 人財育成の魅力: 技能五輪・技能グランプリ選手育成や技能検定受験セミナー等成績やレベルが明確になる人財育成に携わり、人が壁を超えた時に自信に満ちた変化や顔の輝きを見るにつけ教え甲斐等を感じる。
    • 心構え、注意事項について:「やって見せて、やらせて、ほめる」という単純なことの繰り返しを根気よく実践すること
    • 新たに活動を始められる方への助言: 日本も少子高齢化の流れの中、全ての面で日本人のみでは成り立たない面が出てきています。何かを企画される場合は、外国人を含めた「地球国日本県」の視点で捉えてはいかがでしょうか?松愛会の方は、一芸に秀でた方がたくさんおられると存じます。1人1役を結集すれば大きな力となります。子々孫々のためにも、ボランティアを含めて、頑張りましょう!
    • 活動中の写真: 

    5. これからの活動目標

    • 「継続は力なり」を肝に銘じ、松下幸之助創業者の想いを胸に、松下実業学校40年生(15歳から55歳まで40年間社会学を教えて頂いた生徒)としての、技術・技能伝承者として最後まで製造現場に立ちたいと考えています。幸いに僅かですが製造業の日本回帰の機運が見えつつあります。その為には健康第一だと考えています。
    • 記憶に残るもの(成功例、失敗例等): 1966年の技能五輪全国大会フライス盤競技(千葉県習志野市開催)に出場して、従来の競技大会3か月前課題事前公開制から当日発表制に変更されました、この制度変更は、事前公開制とは雲泥の差があり、選手である自分一人では加工手順を全く考えつかず対応できず結局未完成で競技終了したこと。なぜこのような結果に終わったか反省してみると、1年間の訓練期間中は、指導員の先生や先輩が加工手順等は考え選手はロボット的に教えられた通り課題を切削加工し製作するという流れに甘えていた自分がいたことを大いに反省した次第です。この経験が私の職業人生のスタートで最初に最大の教訓を与えてくれました。この苦い経験が自らが主体性を持って考える・発想を転換する・いかに楽に早く実行するか「正・速・美」のものづくりを実践するという重要な指針を与えてくれた。
    • 長く続ける秘訣:父が大阪に就職する際に「人生は重い荷物を背負って長い道程を最後まで走り続けなければならないのだよ!」と伝えてくれました。その時は、よく意味が理解で決まませんでしたが苦しく厳しい時に等に、その言葉を思い起こしています。
    • 年間の卒業者の推移は?: 日本人の技能検定受験者数は横ばいから多少減少気味です。ここ数年は、「外国人技能実習生」の受講者が増加しています。最近3年間はコロナの影響もあり600人前後(年間)で推移しています。コロナ禍が終息すれば外国人実習生の受験者数の大幅増が予測されます。
    • 特に力を入れていることは?: 塾活動は「現場・現実・現物」主義を大切にし、数社の出前塾も実施しています。大手農機、船舶エンジンメーカーや特殊ポンプメーカーの新入社員教育等も担当させて頂いています。出前塾では、依頼企業の企業・職場風土を担当講師が把握理解しながら、半年間でその職場に求められる知識や技能、感覚を身につけるべくカリキュラムを作成しながら訓練します。研修終了時には、技能力のみの評価に限らず人間力の評価項目も付加して評価し、以降の的確な職場配属の指針として大いに参考として頂いています。

    6. 受賞歴

    • 黄綬褒章(2022.4.29 受賞)
    • 技能五輪大阪府大会第1位、大阪府技能検定協会会長賞、大阪府技能検定委員功労賞
    • なにわの名工、現代の名工、全松下技能競技大会金賞・特別技能賞・功労賞

    7. 今後の展望

    • 今後は、コロナ禍次第の面もありますが間違いなく外国人技能実習生(現在50万人在留)が早晩100万人近くに増えます。考え方にもよりますが少子化の中、彼らも貴重な日本の人財であり次代を担う戦力です。日本人にプラスして彼らの技能力を伸長させることが最重要課題となります。実習生制度の本旨からすれば実習受け入れ企業が教育すべきですがOJTのみの技能習得は、厳しい面があります、その補完機能を弊社が果たし日本全体の技能力の底上げに寄与したいと考えています。その為には、現状の倍の100人/月、1200人/年の研修体制を整備したいと考えています。
    • 未来を見据えた人材育成が重要と理解していますが、ポイントは何ですか
       ズバリ優秀な講師陣の確保です。定年延長が65歳、70歳と進む中、若手講師陣を如何に確保するかが課題となります。ヒューマンネットワークでの人材確保から組織的な人材紹介ルート確保と定年延長で継続して在籍職場勤務者が増加する中、如何に早くコンタクトし人財確保するかということです。その為には、早い時点で弊社の取り組み内容・特徴等を周知し、魅力ある勤務条件提示が重要です。今後は人財紹介会社の利用検討も必要と考えています。
    • 大阪府『浪速の名工』、厚労省の『現代の名工』に選ばれていますが、一番のポイントは何ですか
       「継続は力なり」の言葉通り、粘り強く「正・速・美」を追求する姿勢です。自らが表彰されることにより、自己PRはもちろんですが、会社のイメージアップに大きく貢献できていると考えます。特に講師陣の募集には有効で、同じような表彰を受けられた方も積極的に応募して頂いています。
    • 松愛会会員の皆さんに何か一言
       他にも種々受賞者はたくさんおられることと存じます。幸之助創業者に憧れて工学院に入学させていただき、技能五輪教育に始まり好きな仕事で鍛錬を受け、更に卒業後も社会生活でその能力を多少なりとも生かしながらその功績で平成4年春に「黄綬褒章」まで頂いたことは、本当に松下電器に奉公させて頂いた賜物です。先生や先輩の皆様に幾ら感謝申し上げても感謝し切れません。今後も「感謝報恩の精神」を忘れずに何事にも精進して参る所存です。

    <写真提供:関本、取材:梅原、吉川 HP作成:梅原>

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コメント

    • 岡山 幸治
    • 2023年 4月 22日

    岡山と申します。 枚方・交野・寝屋川を中心に屋川を中心に企業支援活動を10年以上続けています。すぐそばにこんな偉人がおられたとは…。 
    足元にも及びませんが、退職後に自分の経験をバースにした地域貢献ができることに幸せを感じています。 
    「継続は力なり」まさにその通りですね。その場限りの支援だけでは自他共に成長できませんね。
    わたくしなりに関本さんの活動に少しでも近づくように頑張ります。
    感銘を受けました。ありがとうございます。

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