2016 社会見学会『国立文楽劇場 上方演芸特選会』

2016年7月28日(木)

 梅雨の明けた7月28日(木)枚方南支部会員64名の方々と地下鉄日本橋駅に近い国立文楽劇場の小ホールに、「上方演芸特選会」の鑑賞に行ってきました。日頃はあまり見かけない浪曲・講談・太神楽を始め、一般になじみの多い落語・漫才と多様な話芸を楽しみました。
 国立文楽劇場に浪曲・講談・落語・演劇など、大衆芸能のための小ホールがあることを今回初めて知りました。3階の小ホールは枚方南支部 64名と、他の小団体を含めて約150名でほぼ満席でした。
  開演は 13:00~15:40 です。
(注)右図は演芸会終了後に小ホール受付横に掲示されたものです。演目は直前まで決まらないことが多く、このように終了後の掲示になるようです。

本日の上方演芸特選会演目

< 演目1:落語「手水廻し」- 露の眞 >

 大阪の客から「手水(ちょうず)を廻してくれ」と頼まれた宿の主人がその意味が分からず、和尚に教わり「長頭(ちょうず)」の男を探してきて、首を回して見せる。後日、宿の主が大阪へ行き、注文した「手水」を料理と間違え苦労して飲んでしまう。
 露の眞さんは京都産業大学出身、30歳の若手?女性落語家です。身振り、手振りを加えての熱演でしばしば会場から笑い声が聞こえました。

< 演目2:浪曲「肉付きの面」- 天中軒 涼月 >

 面打ちの源五郎が観世太夫に般若の面を頼まれ、それを息子の源之助が太夫に届ける。酒に酔っていた太夫は面を源之助に投げつけ真二つに割れた。話を聞いた源五郎は鑿で喉をついて自害する。源之助は長じて面打ち名人となり、観世太夫から般若の面を頼まれる。その面をつけて将軍家上覧の能を舞い終わった太夫は、面が顔から離れなくなる。
 天中軒涼月さんは静岡県出身の女性浪曲家です。浪曲は明治時代初期から始まり、「浪花節」ともいわれます。一つの物語を節(ふし)と啖呵(たんか)で演じます。節は物語の状況や人物の心情を歌う部分で、啖呵は登場人物を演じてセリフを話します。

< 演目3:漫才- 地獄の遺伝子 >

 今回の漫才は「花」と「鼻」を取り違えるトンチンカンな話です。
 地獄の遺伝子さんは、Hell(地獄)とDNA(遺伝子)の二人が結成した若手漫才コンビです。ラジオ、テレビに出演する機会は少ない?ようですが、二人の息はピッタリ合って流石にと思わせるところがありました。

< 演目4:講談「真田家の由来」- 旭堂 南海 >

 NHK大河ドラマ「真田丸」に因み、信州上田城で真田幸村が活躍を開始する頃の物語です。
 仲入前の演目の余談として、講談を語る人が講談師で「好男子」が多いとか、人物名などの記憶力が必要ということで、赤穂浪士47名の名前すべて(多分?)を披露。高座におかれた釈台(しゃくだい)の前で、張り扇と拍子木を巧に扱い、最近の話題性の高い話を語り多くの笑いを誘いました。
 旭堂南海さんは兵庫県出身で、1964年生まれの講談師です。講談の起源は戦国時代といわれていますが、寄席演芸としての原型は江戸時代の大道芸のひとつ辻講釈(つじこうしゃく)に求めることができます。

--- 仲 入 ---

< 演目5:太神楽「太神楽曲芸」- 豊来家 板里 >

p テレビで傘回しの芸を見た人は多いと思いますが、これも太神楽(だいかぐら)の曲芸の一つです。難しい技なので失敗もありましたが、笑いを誘いながらいくつもの芸を披露し観客の目を奪いました。
 豊来家板里さんは大阪府出身で太神楽曲芸師です。太神楽は神社の信仰と結びついて、舞・曲芸・話芸・鳴り物の四つを柱に江戸時代に成立しました。

< 演目6:浪曲「岩見重太郎」- 松浦 四郎若 >

 仇討ちや狒々(ひひ)退治の伝説で知られる、桃山時代の豪傑「岩見重太郎」のパロディです。本浪曲では「わら助」という名前で登場しています。行き倒れ状態の自分を助けてくれた主人が、隣家の主人との御前試合で負けたが、わら助が怪力を発揮してその仇を討つ物語です。
 松浦四郎若さんは1945年生まれ、愛媛県出身の浪曲家です。得意の古典の演目を張りがありよく通る声で語り、笑いを誘う話芸で聞き惚れました。

< 演目7:落語「鰻の幇間」- 桂 春之輔 >

 「鰻の幇間(うなぎのたいこ)」は古典落語の演目の一つで、いわゆる「間抜け落ち」の落とし話です。野ダイコの一八(いっぱち)は昼食にありつこうと客をたずね回り、浴衣を着た男に言い寄り路地裏のうすぎたないウナギ屋に連れていかれた。お土産代も含めて支払いをしたうえに、自分の下駄までお連れさんに履いて行かれたという落とし噺です。
 桂春之輔さんは1948年生まれ、大阪府寝屋川市出身で「三代目 桂春団治」に入門されました。2003年より上方落語協会副会長、幹事長を歴任されています。

 今回の上方演芸特選会はトータル時間2時間40分、ほとんどの会員さんが満足感に溢れた顔をしておられました。真夏の暑い中を楽しんで、笑って、ほっこりした一時を過ごせたことは、身も心も健康促進の一助になったのではないでしょうか。


参考1:演目の台本がネットに
 今回の「上方演芸特選会」の演目の台本が、いくつかネット上で見つかりました。誰が何のためにネットに
アップするのでしょうか。下記は落語「手水廻し」の台本の一部分で、落語らしい言い回しで書いていす。

参考2:赤穂浪士47士の長い名前
 講談の旭堂南海さんが「講談師は記憶力が必要です」といって、赤穂浪士47名すべて(多分?)の名前を披露しました。ほんまにできるの?と思い、47名すべての名前を書き出してみました。誰か下記の記憶に挑戦してみませんか。

 参考3:国立文楽劇場について
 国立文楽劇場は4番目の国立劇場として、1984年大阪市中央区に開館しました。大小2つの劇場と展示室などからなります。大ホールはユネスコの無形文化遺産に記載されている「人形浄瑠璃・文楽」の公演が中心です。小ホールでは演劇や舞踊などが行われ、奇数月に落語・漫才・浪曲などの「上方演芸特選会」が開かれ、東京の国立演芸場的な役割も担います。独立行政法人「日本芸術文化振興会」が運営しています。
 なお、国立文楽劇場は公演演目はもちろん、展示室の文楽人形などの写真撮影も禁止になっています。従って、文楽に関する写真はありません。興味のある方は 国立文楽劇場ホームページ をご参照ください。

レポート:徳田 博・仁木勇一 写真:中溝明男・松島可美・日垣眞宣・吉川 亨 HP作成:冨松義男

PAGE TOP