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第82回「京都・学ぶ会」井上満郎様

第82回「京都・学ぶ会」井上満郎様(京都市埋蔵文化財研究所所長/高麗美術館館長/京都市歴史資料館名誉館長)
講演報告『桓武天皇の母―日本の渡来人の足跡を考える』

 歴史的猛暑が漸く少し和らいで来た2025年9月29日(月)に、2014年9月以来16年ぶり2度目の講演となる井上満郎様に、今回は「桓武天皇の母―日本の渡来人の足跡を考える」と題して講演をしていただきました。因みに、前回の講演タイトルは、「’お稲荷さん’の―成立ー古代京都の国際的環境」でした。出席者は35名でした。
 井上様は1940年生まれの85歳で、その年は日本の初代・神武天皇即位から数えて2600年目にあたり、「紀元節2600」にあたります。現在は、「建国記念の日」(2月11日)として制定されています、専攻は、日本古代史、京都文化論で、沢山の著書を出されており、数々の賞も受けておられています。
 講演の最初に、桓武天皇の母(高野新笠)は渡来人であったという事実を、『続日本紀』から桓武天皇中心の系図をもとにして説明がありました。『新撰姓氏録』に掲載されている1182氏の中の約30%が朝鮮半島からの渡来人であったと言及されました。現在の在留外国人数約377万人の全国民数の比率(3.8%)からすると、いかに多かったかが理解できます。以前は「帰化人」と呼ばれていましたが、現在は平行な関係で「渡来人」と呼ぶようになっていることも知りました。姓(苗字)を見れば、渡来人の流れかどうかが分かりますが、一般人が姓を付けらるようになったのは、明治時代(1870年)からですので、現在は一概にそうとは限りません。
 講演資料は、A4:1枚とA3:4枚が用意されました。『続日本紀』、『日本後紀』、『新撰姓氏録』、『陵墓要覧』から引用された文献を参照しながらの説明に、どんどんと歴史の世界にひっぱり込まれて行きました。日本は島国で、外からの侵略や影響を受けずに、純血統の民族だと思っていた人も多かったと思いますが、目からうろこが落ちました。現代は、隣国間の紛争が多いですが、元を辿れば同じ血が流れている事実を認識すれば、もっと友好関係が築けるはずだと感じました。「歴史は事実であり、真実ではない」という言葉にも感銘を受けました。歴史家E.H.カーの「歴史とは、現在と過去との対話」という言葉を思い出しました。古代からの歴史が、現在までどのような形で継承されて来て残されているのか、歴史の世界は奥深くて興味が尽きません。平安王朝が、問題を抱えながらも幕末まで継続したのは、桓武天皇の苦労と苦闘、努力とその成果であると締めくくられました。機会があれば、続編のお話しも是非聞いてみたいと思う人が多かったのではないかと感じました。Q&Aでは、3~4名から質問がでました。最後に、井上先生に拍手を送って御礼にかえました。

 

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