日本アルプスの 3000m 峰の中では最南に位置する聖岳、名前を見るだけで山心を誘われる山である。東の椹島から入山し、西の易老渡へ下山したかったが、故あって易老渡からの入下山にした。
(8月4日)
JR 飯田線の平岡駅から予約しておいたタクシーで1時間強、芝沢ゲートまで送ってもらう。

芝沢ゲート入口
今タクシーが走ってきたこの遠山川沿いの道は森林鉄道の廃線跡で、ここからさらに易老渡、便ヶ島方面へと続く。2 年前の光岳登山では、タクシーは易老渡までは入れた。しかし昨年も土砂崩れによる道の崩落があり、今は災害復旧工事中のため直接の関係者車両以外はここでシャットアウト。
人はゲートの脇を入っていける。20分程行くと大規模な復旧工事現場に差し掛かる。河原が広いのでダンプがすれ違うのに十分な平坦地が作られている。今日は作業をしていないのでここを通らしてもらう。1 時間 15 分程で光岳方面への橋があり、易老渡に着く。さらに廃線跡の道を辿りトンネルを抜けると便ヶ島の聖光小屋に着く。

光岳方面へ渡る橋
(8月5日)
今日からが本番の山登り。5:40に小屋を出発する。西沢渡へも引き続いて廃線跡を歩くが、ここの出発地点だけは遠巻きしているので歩行道は2回程廃線跡をショートカットする。道は崩れた所や崩落個所、特に落石箇所が多いので気をつけたい。50分程で西沢渡に着く。ここで渡渉となるが人力のゴンドラが設置してある。荷物用で150kgまでで、人が乗ることについては自己責任である。ゴンドラを牽引するロープは滑車の原理を応用しているため 1 回に50~60cm 引っ張っても10cm程しか移動しない。

西沢渡に設置のゴンドラ
また女性 1 人の場合には到底無理ではないかと思われる程きつい。川を渡り終えると登りになるが直ぐの所に朽ちかけた営林署跡の建物がある。この建物裏を過ぎると本格的な山道になる。斜面は急でジグザグの道にしてくれているが、それでも一歩一歩がずり落ちそうなくらい急である。広葉樹が見受けられた森もいつの間にか針葉樹のシラビソだらけの森に変わっていく。また立木の本数と同数くらいの倒木があり、しかも苔むしている。長く続いた樹林帯の覆いが取れるとようやく薊畑。ガスで景観はない。少し前からポツポツと雨粒も。途中から着こんだ雨具を脱ごうかと迷っていると本格的に降り出してきたため慌てて聖平小屋に駆け込むも30分近く雨に打たれてしまった。

倒木が苔むしたシラビソの樹林帯
(8月6日)
朝起きた時から晴れており、日出も見ることができた。しかし天気予報では不安定な天候模様で午後からはまたシャワーの予告も。聖平小屋には2連泊のため、サブザックに雨具、防寒着、飲料水類1.3L、行動食2食分を詰めて、小屋を5:50 に出発。薊畑までは昨日の折り返しである。薊畑ではほとんど雲もなく上河内岳や茶臼岳の山並みが見て取れるが光岳がどれかははっきりしなかった。小聖岳の直下に差し掛かると森林限界を越え前聖岳の全容が確認できるようになる。小聖岳を過ぎるころから、下の方から雲が沸き上がりだし、どちらが早く山頂に到達できるか競争だ。9:35 に前聖岳に到着。残念ながら、ガスのため奥聖岳がやっと見える程度であったが時折雲間から遠方が見える。山頂はガラガラで、小屋に泊まっていた人たちの中では出発が遅かったためか山頂には他に1人しかいなかった。
- 小聖から前聖を望む
- 前聖岳山頂、奥聖岳が雲間から見え隠れする
◆メンバー:S、他2人
◆コース:
(8月4日)芝沢ゲート14:10~易老渡~16:05便ヶ島
(8月5日)便ヶ島5:40~西沢渡~薊畑~聖平~14:15 聖平小屋
(8月6日)聖平小屋5:50~薊畑~小聖~9:35 前聖~奥聖~前聖~薊畑~13:15聖平小屋
(8月7日)聖平小屋6:15~14:40便ヶ島
(8月8日)便ヶ島8:05~9:35芝沢ゲート
◆所要時間/歩行時間:
(8月4日)1時間55分/1時間40分
(8月5日)8時間35分/6時間55分

前聖岳から奥聖岳へ向かう途中からの奥聖岳
(8月6日)7時間25分/6時間25分
(8月7日)8時間25分/6時間10分
(8月8日)1時間30分/1時間30分
◆2024 年度入山情報
タクシー、一般車とも芝沢ゲートまで入れる。歩行者は芝沢ゲートから易老渡および便ヶ島まで歩行可能。聖光小屋は通常営業。聖平小屋は素泊まり営業で寝袋提供あり。自炊は食堂利用。飲料、簡易的食料の販売もあり。
◇易老渡ルートの今後
芝沢ゲートから西沢渡までのルートは近年頻繁に災害が発生し今後通れなくなるのではと心配になるところである。しかし芝沢ゲー
トを入ってしばらく歩いたところの崩落個所では大規模な復旧工事を行っていた。また便ヶ島から先の崩落個所では復旧工事のための資材運搬用の簡易モノレールの設置工事中だった。聖光小屋の主人の話では「廃線跡の道は市道になっていて復旧工事は国の補助でやっている。最終的には西沢渡まで車が通れるようにする計画がある。さらに西沢渡の渡渉部には有志で小さな橋を架ける。その資材もすでに準備してある。」とのことで、自然災害による一時的な通行規制は生じたとしても復旧作業には務めてくれそうな模様であった。
◇赤石山脈
南アルプスの本来の名称は赤石山脈。聖光小屋の主人の話によると。赤石山脈は堆積層が隆起してできた山脈でその石が赤いため赤石とつけられたという。言われてみれば石も砂礫の道も本当に赤かった。
- 災害復旧工事現場
- 赤石による赤い道




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