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第65回「京都・学ぶ会」南條和哉様(京仏具・鳴物鋳物師「京もの認定工芸士」)講演報告

 今回は、異色の経歴の持ち主である、京仏具・鳴物(おりん)鋳物師で「京もの認定工芸士」の南條和哉様に、「伝統の京の音色・佐波理おりん 音色を作る技と音色の新しい楽しみ方」と題して、ご講演をしていただきました。1979年生まれの43歳ですが、高校を卒業後飲食店に就職して、6年間料理の道を目指されましたが、縁あって24歳で、佐波理製鳴物神仏具製造の有限会社南條工房(宇治市)に入社され、現在20年目を迎えられ、次期七代目を継がれることになっています。南條工房は、創業190年余りの歴史を持ち、歴史と共に培われた技術を用いて、鳴物神仏具という神社仏閣や家庭で使われる音の鳴る神具(祇園祭の鉦など)や仏具(おりん)を専門に作ってきた国内で数少ない(京都には2軒のみ)工房です。
※11月7日(月)ラボール京都、受講者数は34名でした。

 素材は、「佐波理(さはり)」(別名:響銅)という銅と錫の合金のみを使用し、型作りから仕上げまで一つ一つ手づくりで行い、代々受け継ぐ工房独自の配合率と伝統的な薪を用いた「焼型鋳造」で、素材の特性を生かし、二つとない音色生み出しています。おりんの市販品製造は富山県高岡市が盛んですが、素材が銅+亜鉛の真鍮で、柔らかく加工がしやすいですが、音色は佐波理とはかなり違います。南條工房では、厳選した特別な素材を、更に生かす技術が伝承されています。工程は、<型作り>→<鋳造>→<切削加工>→<仕上げ>ですが、各工程でじっくり時間と手間を掛け約2ケ月ぐらいで完成となります。各工程の詳しい説明がありましたが、本当に手作りで一つ一つ丁寧な物づくりをされていることが十分に伝わりました。おりんのサンプルを幾つも並べて、それぞれの音色を聞かせて貰いましたが、微妙に音色が違いますが、真直ぐに伸びる音に共通の特徴があり、如何に音色に拘っておられるかがよく分かりました。

 しかし時代と共に、家庭に仏壇がないところも増え、2017~2018年にはおりんに対する需要が低迷し出し、新しい時代に相応しい新しいもの作りへの挑戦が始まりました。2019年に、もっと身近におりんの音色を楽しんで欲しいという想いから佐波理製鳴物製品の自社ブランド「LinNe」を立ち上げ、自由な用途で使えるおりんを開発され、日々の暮らしの中で楽しみ豊かな時間をつくる音色の使い方の提案をされています。「Chibi」「Ren」に続いて、「Myo」が今月発売になります。休憩時間には展示されたおりんや祇園祭の鉦を実際に叩かせていただき、改めて南條工房のおりんの澄んだ音色と美しい余韻が、ちょっと豊かな時間と心の安らぎを与えてくれるのを直に体験できました。南條さんは、新たな取り組みとして、サウンドアーティストや作曲家へのおりんの提供や、サウンドインスタレーションのコラボレーション、演奏家やヨガインストラクターとのイベント開催、Apple京都でのワークショップの開催などで、工房が生み出す音色を発信されています。今回の講演に対して、女性会員からの反響が大きくありました。おりんの音色が女性の感性と心により響いたのでしょうか?

次回は、1月30日(月)に川瀬みゆき様(書道家・篆刻家)に「文字が芸術になる所以(仮題)」で講演をお願いしています。ご期待下さい。

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