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第70回「京都・学ぶ会」山本 修様(便利堂コロタイプ研究所所長)講演報告

 残暑の残る中、9月25日(月)ラボール京都にて、京都の老舗の印刷会社である「便利堂」のコロタイプ研究所の山本修所長様に、『京都に残る世界最古の写真印刷「コロタイプ」』と題してご講演をしていただきました。今回で70回目の開催になり、37名の出席者数でした。山本様は、1960年京都生まれで、平安高校卒業後、1979年に(株)便利堂に入社され、コロタイプ部門一筋に従事して来られました。便利堂はは明治20年(1887年)創業で、中京区新町通竹屋町下る弁財天町302番地にあり、文化財、美術部門に特化した、印刷出版・商品販売・写真撮影・コロタイプを展開されています。昭和10年に撮影された法隆寺金堂壁画(原寸分割撮影)のガラス乾板が国の重要文化財に指定され、また撮影の翌日に発見された高松塚古布石室内の写真は有名。コロタイプ部門で世界唯一のカラーコロタイプを実現させ文化財の保存と活用に貢献されています。山本講師はマイクを使わずよく通る地声で、ユーモアを混ぜながら力強い語り口で、コロタイプ印刷の世界に私達をぐんぐんと引き寄せられました。

 最初に、印刷の歴史的なポイントとして、印刷の始まりは木版印刷で中国で生まれたと言われているが、現存する世界最古の印刷物は、8世紀(奈良時代、764年)に日本で作られた百万塔陀羅尼経です。よく知られているヨハネス・グーテンブルグが発明した活版印刷(活字)技術は、1450年頃です。現在の主な印刷技術の種類には、1.凸版(木版印刷・活版印刷に代表され、書籍や名刺の文字を印刷)2.凹版(銅版印刷・グラビア印刷。切手等の大量印刷に向いている。また、凹みに濃くインクが入ることから優れた美しい写真印刷が可能)3.孔版(シルクスクリーン。Tシャツや布への印刷に向いている。プリントゴッコや懐かしいガリ版印刷も孔版の一種)4.平版(石版印刷・オフセット印刷。水と油の反発を利用する印刷技術で、大量印刷に向き、現在の印刷の主流(99%)です)NHKの朝ドラ「らんまん」で牧野富太郎が使用したのは、石版印刷(リトグラフ)で印刷枚数が200枚ぐらいに限定されましたが、アルミ版(ガラス+ゼラチン(写真の感光材)+写真焼付)になって300~500枚の印刷が可能となりました。因みに、私達の卒業アルバムは白黒コロタイプでした。参考までに、1970年の大阪万博の頃が、白黒とカラーの写真の端境期に当たります。オフセットやインクジェットには網点と呼ばれるドットがあるが、コロタイプにはない。コロタイプ印刷は撮影されたネガをゼラチン版に直接密着露光するので、輪郭がくっきりと鮮やかな画像が得られる。ドット印刷は輪郭がぼやけます。ここまでの説明で、印刷技術に対する様々な知識が入力され、理解が深まりました。

 後半は、いよいよ「コロタイプ印刷」のワークショップです。随行された佐竹晃一さんと藤木祥子さんのサポートが加わり、会員が2名づつ実際にコロタイプ印刷に取り組みました。嵐山の渡月橋の古い絵葉書の写真版を使い、ローラーでインクを練り版の上を何回も擦ります。最後の印刷の和紙を捲る瞬間に歓声が上がります。刷り上がったものは良い記念になり、家で額に入れて飾ると言う人が何人もいました。私達に「コロタイプ印刷」を体験させようと沢山の道具を持参していただき本当に有難うございました。他にも色々なコロタイプ印刷のサンプルを持参して頂きました。会員さんには是非この機会に一度便利堂さんに足を運んで、印刷の現場や色々な展示物を見て貰いたいと主催者としては思いました。

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