枚方の大学 第2回『大阪工業大学』情報科学部

実施日:2009年1月26日取材

<画像をクリックすると大きく表示されます>

 曇りがちで肌寒い1月26日、大阪工業大学枚方キャンパス情報科学部を取材しました。情報科学部学部長・教授で工学博士の石尾様と、情報科学部事務室室長の塚本様にお話を伺いました。

大阪工業大学の概要

★大阪工業大学の歴史は古く、1922年に創設された関西工学専修学校を母体として、1949年に工学部の単科大学として発足ました。その後、1996年に情報科学部が、更に2003年には我が国で初めての知的財産学部が設立されています。

 建学の精神に『世のため、人のため、地域のために理論に裏づけられた実践的技術を持ち、現場で活躍できる専門職業人を育成する』を掲げ、環境、資源、少子高齢化、グローバルの競争激化などの問題をかかえる現在の我国にあっても、色あせることなく脈々と受け継がれています。

 工学部と知的財産学部は大宮キャンパスに、情報科学部は枚方キャンパスにあります。工学部には4,783名の学部生と257名の大学院生、情報科学部には1,866名の学部生と59名の大学院生、知的財産学部には630名の学部生と77名の大学院生が在籍されています。卒業生は10万人以上で、その内情報科学部の卒業生は3,300人です。

情報科学部(枚方キャンパス)の概要

★ 情報科学部は京阪奈学研都市計画に呼応して、枚方市北山の地に設置されました。京阪樟葉駅からバス20分、JR長尾駅からはバスで10分、直通バスではわずか7分という交通便利な場所にあります。ここで先ず目を奪われるのが、一号館の威容です。国会議事堂を模したと言われ、6階建ての高層で議事堂以上の風格があります。正面玄関入り口左右の獅子の石像も、一見の価値があります。

 玄関をくぐると、そこは吹き抜けのエントランスホールです。その正面には3人の女性が肩を抱き合う彫刻と泉があり、心を和ませてくれる空間です。1号館には大きな食堂やコンビニがあり、広く一般の人々にも開放されています。

情報科学部の教育体系

 情報科学部は、計算機ハードウェア・ソフトウェア開発・組み込みシステムを学ぶコンピュータ科学科、情報ネットワーク・情報セキュリティ・デジタル通信を学ぶ情報ネットワーク学科、社会基盤システム・大規模ソフトウェア・データベースを学ぶ情報システム学科、情報加工技術・デジタルコンテンツ技術・ヒューマンメディアを学ぶ情報メディア学科の4学科から成ります。さらに、修士博士課程の大学院があり、43名の先生方で幅広い分野に対応した教育体系を運営されておられます。

 情報科学部の特色は、コース制カリキュラムにより学び方の選択ができることです。コースには総合コースとコンピュータサイエンス(CS)コースの二つがあります。総合コースは、各自の特徴のある履修によって専門性を高めることを目指します。CSコースは、JABEE(日本技術者教育認定機構)が認定するIT技術者を目指します。学生は2年次に二つのコースのいずれかを選択します。CSコースを修了すると、卒業証書に加え国際的で大規模な仕事を受注できるJABEEの認定書が交付されます。

 特筆すべきは卒業生の就職率です。多くの大学では90%程度とのことですが、情報科学部では就職希望者の96%以上が意中の会社に就職できる満足感を味わっておられます。

学内を見学させていただいて
バーチャルリアリティ室
 准教授・工学博士 西尾様他の方々からお話を伺いました。室内で先ず目に入るのが大きなスクリーンです。映像を中央・左・右の6台の映写機で映し、立体眼鏡を通して3D映像を観賞する装置です。多数の魚が水中を泳ぎ回る様子は、思わず手を延ばしてみたくなるほどの迫力があり、現実の水中の眺めと遜色がありません。

 眼鏡不要で3D映像を見ることができる液晶ディスプレイもあります。この装置は新製品の紹介などに活用できます。学生はこれらの装置でソフトウェアやプログラミングを学びます。

デジタルアーカイブセンター
 人の身体に付けたセンサーを8台のカメラで感知して、その動きを解析する施設です。能や日本舞踊などの古典芸能の所作を保存することができます。この装置は弓道やゴルフの練習にも活用できます。例えば、コーチとプレーヤのフォームを比較して指導のポイントを表示することが可能です。

 重要な文化財をコンピュータに保存する三次元スキャナもあります。考古学では、出土した土器の破片を張り合わせて復元する際に試行錯誤を必要としますが、この装置を使えば極めて短時間に復元してくれます。

 重量感覚や接触感覚を操作する人に伝える装置もあります。ここでは金魚すくいの擬似体験もさせていただきました。この装置は外科手術や水墨画や書道の練習などにも使えます。

ロボティックセンター
 教授・工学博士 佐野様他の方々から、企業と連携したプロジェクト、ユビキタスホームの説明をいただきました。目覚まし会話、忘れ物告知、お見送り、お迎え、レシピ提供、忘れ物発見、TV番組提供、戸締りチェックなど生活の中のあらゆる要求に、かわいいロボットが支援してくれるシステムです。

 盲導犬ロボットはGPSを使って、希望の場所に障害者を案内してくれます。この研究は『障害者を対象とした福祉機器 学生アイデアコンテスト』で、2008年に大阪府知事から表彰を受けておられます。

 学生の方々が雑誌のおまけのマイコンを使って手作りした、セルフバランスロボットにも楽しく体験乗車させていただきました。

大講堂と情報処理演習室
 6階には大講堂と、複数の情報処理演習室があります。大講堂の内部は劇場のようで一度に450人が受講できる広さがあります。講義の出席はIDカードで管理されています。

 情報処理演習室は明るい照明の元、140台のパソコンが教壇を前に整然と配置されている威容は壮観です。同様の教室が3教室あります。大学全体のパソコン数は、2,000台ほどあるということです。

 大きな窓からは広々としたキャンパスと周囲の町並みや遠くの山々が一望できる素晴らしい眺めを楽しむことができます。

取材を終えて

 正門から正面玄関に至る道、エントランスホール、1号館を貫く長い廊下、見学させていただいた研究室や情報処理演習室の内部など、すべて清潔で整理整頓が行き届いていて、大学の倫理観と学生の感性の整合性をうかがい知ることができます。

 エントランスホールには学生が考案した液晶画面の掲示板があり、学内情報や京阪バスとタイアップした発車時刻が逐次表示されています。これは学生の学びの成果が学内の情報システムに大きく貢献している一例で、卒業即実践的職業人につながっています。

 今回の訪問によって情報科学は我々の想像も及ばない幅広い分野に活用されようとしていることを知りました。昨今の社会事情は混乱しておりますが、この大学で学ばれる方々は大学の使命である学士力を備えた『実践的職業人』となり、社会のあらゆる分野でいち早く活躍されることを期待したいと思います。

 なお、「大阪工業大学 情報科学部」の詳細は、こちらをご覧ください。

<取材:山添、冨松、岸本、井須、日垣、金箱、藤田 レポート:藤田 WP編集:梅原>

PAGE TOP