第59回夢中人 坂本 奈三郎さん (12班)【菊人形づくり 20年】

菊人形づくりを20年 続けてきました

枚方市在住
2025年10月8日取材

はじめに

 今回紹介させていただくのは、枚方市にお住いの坂本 奈三郎さん(12班)です。坂本さんは定年後に始めた「菊人形づくり」を生涯のライフワークとして現在まで、仲間とお元気に楽しんで活動されています。取材では「菊人形づくり」の活動の貴重な話をおききしました。

坂本さん近況(2025年菊花展特設花壇の菊人形作品と)
坂本さん近況(2025年菊花展特設花壇出展予定の菊人形作品と:仕事場のサプリ村野にて)

 2005年7月に再就職先を探しているときに、ひらかたパークの菊人形展が今年で閉幕と知り、見納めとして見学しました。
その時に人形の躍動感や顔の表情(喜怒哀楽)がリアルすぎてビックリ! これが見れなくなる寂しさを感じていました。

 その後、広報ひらかたで、市民の手で枚方市の伝統文化を継承する「菊文化創造プラン」が発表され、菊人形の制作ボランティアの募集に応募して、見事に10人枠の一人に選ばれ、その後「ひらかた市民菊人形の会」での「菊人形づくり」活動を20年間仲間と苦楽を共にして続けてこられました。

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1) 坂本さんのプロフィール

  • 1945年(昭和20年):広島県福山市生まれ
  • 1964年(昭和39年):松下電器入社 電子部品変成器(事)購買(調達)配属
  • 1974年(昭和46年):変成器(事)営業部 販売管理/企画/生産管理
  • 1983年(昭和58年):コイル(事)社内営業/セールス
  • 1997年(平成 9年):営業本部 タイ松下電子部品(株)出向 営業総括
  • 1999年(平成11年):コイルBU 営業/社内全域/関西地区外販
  • 2001年(平成13年):コイルBU 営業企画 セールスサポート/宮崎松下コイルBU総括窓口
  • 2005年(平成17年):定年退職
  • 2006年(平成18年):ひらかた市民菊人形の会のメンバーとして活動開始

地域貢献活動

  • ひらかた市民菊人形の会 創設メンバー(現在20年目挑戦中)
  • 自治会役員 会長 
  • 民生委員

2)菊人形づくりのきっかけと出会い

  • 定年退職の年(2005年)セカンドライフを模索中にひらかたパークで開催の菊人形展が今年第94回(義経)で終了(閉幕)の報道がありました。
  • 私が初めて菊人形を見たのは、就職の年(1964年)の赤穂浪士でしたが、あの討ち入りの人物の表情や15段返し等、驚きと感動が甦り、これは見納め!と見学し、あらためてこの菊人形がなくなる、勿体ない、寂しいという思いが余韻として残りました。
  • この年に閉幕を受け枚方市は「市民の手で菊人形の技術を継承」をめざし公募が開始されました。
    翌年(2006年4月)から菊人形のボランティア活動開始です。
  • 素人でも人形師が教えてくれることを知り、入会を決意し公募しました。公募者78名のうちから、男女各5名が選ばれ、私も幸運にもその中の一人でした。
  • 選ばれた10名とひらかたパークの人形師とひらかたパークで研修された市の職員の12名で「ひらかた市民菊人形の会」が2006年にスタートしました。

3)「ひらかた市民菊人形の会」の活動

2006年に10人で発足し、サプリ村野で活動している市民ボランティアの団体です。発足前年に閉幕したひらかたパークの「ひらかた大菊人形」で培われた菊人形の制作技芸を継承するため、秋の「菊花展」や夏には「七夕」をテーマにした京阪枚方駅コンコース、枚方市役所前での展示など年間を通じて活動しています。

4)菊人形づくりのやりがい・楽しさ・厳しさ

  • 菊人形の胴体の部分に使う『人形菊』は、茎の柔らかい小菊の総称で、ひらかた市民菊人形の会では、「みのりの秋」など約30種の人形菊の品種を一年中いろいろな作業をして保存栽培しています。
  • 菊の栽培は「近年の猛暑による立ち枯れ、開花遅れ」「連作障害」等の自然との闘いです。
  • 苗菊の種類分け、色別、育成栽培、ポット揚げ、から畑の工作植え付け、除草、消毒等の短期間での収穫と根巻きの様々の作業が続きます。
  • 「ひらかた市民菊人形の会」では、菊づくりだけでなく、人形の頭(カシラ)・胴殻(どうがら:人形の骨格)、大道具、小道具、小物、背景画、衣裳まですべて自分たちで手づくり制作しています。
  • 制作は分業ではなく、年間を通して会メンバー全員が全行程を担います。年間を通して週4日の活動です。
  • ひらかた市民菊人形の会は、年一回の菊人形展はもちろん花の咲く秋だけではなく、枚方市の主催する催事(桜祭り、緑化フェスタ、七夕祭り、鍵屋 お化け」、小学校出張講演・・・など)に積極的に参画し、四季折々賑わい創出に貢献しています。2025年7月には万博に枚方市出展のテーマ「くらわんか舟」で菊人形も参加しました。

5) 11月5日にテレビ大阪ニュース『伝統を守る手仕事の美【ひらかた菊人形】高齢化で継承の危機も』で放映されました。坂本さんもインタビューを受けて登場しています。


~ 大阪NEWS【テレビ大阪ニュース】チャンネルより出典 { YouTubeの「埋め込みコード」を使ってサイト表示 }

6)2025年 第20回市民菊人形展の作品(大河ドラマ「べらぼう」をテーマに制作)

◇ 展示会場と展示菊人形(2025/10/21~11/17)

  • 枚方市駅2Fコンコース 「蔦屋重三郎と九郎助稲荷」 2025/10/21~
  • 菊花展特設花壇 「瀬川襲名花魁道中とお付きの禿(たけの、ささの)」2025/10/29~
  • 枚方市役所別館北側 「蔦屋重三郎と瀬川」 2025/10/29~
  • くずは市民の森 「蔦屋重三郎と瀬川」 2025/10/29~

なお、写真の人形は10月28日で展示したものと11月8日に人形の入れ替えおよび着付け補修をした後に撮影したものがあります。

◆ 枚方市駅2Fコンコース「蔦屋重三郎と九郎助稲荷」

◆ 菊花展特設花壇「瀬川襲名花魁道中とお付きの禿(たけの、ささの)」

◆ 枚方市役所別館北側「蔦屋重三郎と瀬川」

◆ くずは市民の森「蔦屋重三郎と瀬川」

7)大阪・関西万博LOCAL JAPAN展(2025年7月)と鍵屋資料館・妖怪人形(2025年8月)に出展

 最後の妖怪の写真は、枚方市の鍵屋資料館で子どもの夏休み向けに毎年開催しているイベントで、今年は2025年8月~9月におこなわれた「鍵屋にすみついたおばけをさがせ!」のイベントに妖怪人形の製作で参画。
写真は坂本作の1つ目小僧と小豆洗いの妖怪です。後方の頭は私の最後の人形の頭となりそうです。
(坂本さんは今年菊人形づくり活動20年で節目の年を迎え、引退を決意しているそうです。)

8)その他:菊人形づくりの豆知識

  1. 菊人形とは:等身大の人形の衣装部分を菊の花や葉で飾りつけた菊の着物をまとった華やかな人形のことで、枚方を代表する伝統文化です。
  2. 胴殻(どうがら)とは:「胴殻」は人形の骨格や体のラインを形作るための下地部分のことで、割竹を芯にして藁を巻いた「巻藁(まきわら)」で作られていて、肩幅や腕の広さ、お尻のふくらみまで細かく再現されている。胴殻があるから、着物を着せたときに自然な体の線が出て、まるで本物の人間みたいに見える!まさに、見えないところにこそ美が宿る感じ。
  3. 菊人形の「巻き藁(まきわら)」とは:人形の胴体部分を作るための芯材で、割った竹を芯にして、そのまわりに藁をぐるぐる巻いていくことで、人形の骨格となる「胴殻(どうがら)」ができる。これが菊人形のベースになる部分で、肩幅や腕の広がり、お尻のふくらみまで、細かく再現されている。この巻き藁の上に、根付きの菊を「菊玉」として差し込んでいくことで、華やかな衣装が完成する。まさに、藁と花で命を吹き込む職人技! 
  4. 連作障害(れんさくしょうがい)とは:同じ場所で同じ種類の植物を繰り返し育てることで、植物の生育が悪くなる現象です。「ひらかた市民菊人形の会」では村野と中振に菊人形畑を確保して連作障害を避けています。
  5. 「根巻き(ねまき)」とは:植物や樹木を移植するときに、根を保護するために土や布で包む作業のこと。

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<写真提供:坂本/取材:櫻田、中村/写真撮影:松島、中村/HP作成:中村>

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