QOL 松愛 突然介護:本人家族がすべきこと

本人、家族がすべきこと

病院でのリハビリの心得

 リハビリはできるだけ早く開始することが望ましいです。
寝たきり・安静がしばらく続くと筋力の低下が著しく、筋も固まり手足を動かすことや体を支えることができなくなるので、そのような状態になってからのリハビリでは回復が顕著に遅くなります。

 病院は、救命救急・手術・治療の病院とリハビリテーション病院に分かれています。
救命救急病院では、手術・治療(約1ヶ月)が主体でリハビリはほとんど行われません。
これはリハビリの大きな問題です。この期間に筋力が衰え、筋が固まってしまうからです。

 身体をほとんど動かせない、介護なしに動くことができなくなった状態が続くと、10日前後で筋肉も筋も徐々に固まり始めます。たとえストレッチやリハビリを開始していても動作範囲が狭くなり、可動域の最大まで動かすと、昨日まで動かせていたのに、突然痛い痛いと言い始めます。その状態を放置しておくと、どんどん固まり可動域が狭くなり、病院の本格的なリハビリが始まるころには、全く動かなくなり、病院でのリハビリ対象外(治る見込みがないと判断される)になることが多いです。

 このような判断になった場合は、例えば動かない右手の訓練はせず、左手で生活に必要な動作すべてをできるようにするリハビリを実施する、また足が動かなければ車いすが前提のリハビリ訓練になり、一生片手、車いすの生活になってしまいます。

 したがって、病院でのリハビリが始まる前の自主リハビリは極めて重要で、多少の痛みがあっても我慢できる痛みの範囲まで動かすストレッチを痛みが和らぐまで何度も繰り返すことをお勧めします。そうすることで可動域を元に戻すことが可能になります。

  指、手首、肘、肩、足首、膝、股関節など本人が全く動かせない、意識がない状態であっても、家族が手を添えて、手指、肘、肩関節は正常な時に動かせる可動域を毎日動かして、可動域の確保をすることが重要です。このようなリハビリは病院ではやってくれませんので、家族が唯一の頼りです。このような自主的なリハビリは、病院でのリハビリが始まった時に大きな効果を発揮します。

病院での自主的なリハビリ心得

 本人が自らできない場合が多いので、家族の助けが極めて重要な期間です。
 ・手術後1~2日後にはリハビリを開始する。
 ・寝たきり状態でもリハビリは可能です。

病院での自主リハビリ(寝たきり・本人が全く動かせなくても)

 関節の可動域の確保:手首・肘・肩・膝・股関節 家族が手足を持って360度動かす。
 指の動きの確保:声をかけながら親指から小指まで順番に曲げ伸ばしをする。
 筋力の確保:ベッドの上で腹筋(両手を持って補助し、体が1cmでも浮けばOK)
       ベッドの上で足を曲げ伸ばし(家族が足の裏を押して負荷を与える)
       スクワット(ベッドの横で両手を持って本人を支えながら、立ち座りする)

私の体験記(#2) 妻の自主リハビリ!!  水上俊彦(8班)

 私の妻は、救急救命病棟での治療が終わって一般病棟に移された時には、自分では身体を動かすことができず、移動するときはベッドから起こされ。抱えられて車いすに載せられ、車いすでの移動も自分では全くできず職員がしていました。右半身不随で右の手足も指も動かせない状態でしたが、救命救急病棟から一般病棟に移った日から自主リハビリを開始しました。手の指は開いた状態(パーの状態)から声をかけながら、親指と言って親指を曲げる、次は人差し指と全部の指を曲げて、グーにする。次は小指と言って、小指を伸ばす、それを繰り返して全部の指を伸ばしてパーにする。全く動かない指でしたが、これを何度も繰り返しました。

 1週間が経過した時、妻が自分でわずかに指を動かせるようになりましたが、それを見た脳卒中・脳梗塞科の部長先生が理学療法士を呼びつけて、「お前、これを見てみろ。指が動いてるぞ」とびっくりするくらい驚いていました。同様に、肘、肩の可動域を毎日動かすストレッチをするだけでなく、ベッドの上での腹筋、ベッドの横に立って、ベッドに座ったり立ったりのスクワットなどの自主リハビリを繰り返しましたが、1ヶ月経っても自分では何もできないままでした。

 その後リハビリ病院に転院すると、関節の可動域が確保されていたことと筋力が落ちていなかったため、初日から車いすで動き回り、1ヶ月後には、つかまり立ち歩きができるようになり、2か月後には杖歩行に、3ヶ月後には一人歩きができるようになったのです。病院の人も驚く回復で、主治医からも「ご主人の賜物ですね」と言われるまでになりました。

 妻は今でも半身不随ですが、家では杖なし歩行、トイレも風呂も自分で入れるまでになっています。もし自主リハビリをしていなければ、今頃は車いすで、トイレも風呂も介護が必要だったと言われています。医師などの専門家が診て、寝たきりから車いすくらいまでしか回復しないと思われていたにもかかわらず、自分で生活ができるようになったことは、本人にとってもストレスなく自由に動けるし、家族の負担も少なく、不自由ながらも楽しい人生になっています。

 この例では、初期の自主リハビリがいかに大切か、家族の補助がいかに重要かを示しています。病院やリハビリ施設でのリハビリだけでなく、自主リハビリを病院でも家でも継続することで2年たっても5年たっても際限なく回復してゆくので、あきらめることなく自主リハビリを継続しましょう。

作成:水上

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